医師として働けなくなったら長期で補償!

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医師向け所得補償保険のメリット・デメリットとは?

目次
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ここでは、医師向けの所得補償保険について、基本的なメリットとデメリットを解説します。

メリット1:安定した所得補償

医師向け所得補償保険の基本的なメリットは、予期せぬ事態に備えて安定した所得補償が受けられることです。

医師向け所得補償保険は、てん補期間(補償を受けられる期間)により、短期所得補償と長期所得補償に分けられます。てん補期間1~2年のものが、短期所得補償保険、てん補期間2年超~満70才の長期補償が得られるものが、長期所得補償保険になります。

短期の所得補償保険では、就業障害により医師としての仕事ができないとき補償対象となります。

長期の所得補償保険では、就業障害により医師としての仕事ができないときに加え、就業不能期間を経て、その後復職した際に、医師としての仕事が一部しか行えず、所得喪失率が20%を超えてしまったときにも所得喪失率に応じて補償が継続して受けられます。

医師は一般的に所得水準が高く、他業種に比べて仕事ができなくなった場合の経済的ダメージがより大きい職業です。だからこそ、万が一、何かしらの予期せぬ事態が起きてしまい、医師としての仕事ができなくなってしまった場合でも、不安なく生活が送れるように加入しておきたい保険といえるでしょう。

メリット2:専門職に特化したカスタマイズ

働いている医師には勤務医と開業医がおり、病気や怪我をした場合にそれぞれ特有のリスクやニーズがあります。

ですが、医師専用に設計された長期所得補償保険なら安心。一般の団体長期障害補償保険では、免責期間中はいかなる業務にも従事できないことになりますが、医師特有のニーズに合わせてカスタマイズされた所得補償保険であれば、直前の業務に従事できないことが保険金の支払い条件になっており、万が一医師として働けない事態が起きても補償が受けられるのです。

所得補償保険は、「所得」を補償してくれる保険ですが、補償対象となる「所得」の定義は、勤務医と、開業医で異なります。

まず、勤務医における所得は「給与」になります。さらに、メインの勤務先の給与所得に加え、掛け持ちで働く病院における医師として得た所得も補償対象に含むことができます。

開業医の場合、本人の給与ではなく、医院の「営業利益+固定費」を所得とみなすことができます。

固定費は、事業を休止しても必要な経費とみなされ、補償対象となります。固定費の例は、専従者給与、従業員給与、地代家賃、租税公課、減価償却費、保険料、支払利息、福利厚生費、医療機器のリース代などです。

固定費が補償対象となることで、さまざまな医院運営の継続リスクをカバーすることができます。

開業医の所得補償の対象となるのは上記の通り「営業利益+固定費」ですが、言い換えると、売上から変動費を除いたものです。

変動費の例は、医薬品費、診療材料費、検査委託費、残業手当、社会保険診察明細書作成委託費、交際費、交通費、光熱費などです。

メリット3:税制面での優遇措置

医師向け所得補償保険の保険料は、入院や通院などに伴う給付部分にかかる保険料として取り扱われるため個人では介護医療保険料控除の対象となります。

個人開業医が自己を被保険者とした所得補償保険の保険料を支払った場合、その保険料は家事費であり「業務について生じた費用」とはいえず、必要経費に算入することはできませんが、介護医療保険料控除の対象となります。

法人契約の場合、受取人の設定により取扱いが異なります。

保険金の受取人を法人とした場合は、支払保険料として損金算入が可能です。

保険金の受取人を役員や従業員とした場合は、法人の福利厚生費として損金算入が可能です。ただし、役員や特定の従業員のみを補償する場合、保険料相当額は給与の上乗せとみなされ、給与課税対象となります。

また、もしもの際に受け取れる保険金に関しては、身体の傷害に基因して支払を受ける保険金に該当するので「非課税」とされています。ただし、これは被保険者本人が受け取る場合です。

保険金を法人受け取りとした場合は、法人の益金として計上されますので、課税対象です。

その後、受け取った保険金を給与や見舞金として支払うことで、あらためて損金として認められますが、見舞金の一定額以上の部分は賞与扱いとなり、役員賞与は損金算入できません。さらに、保険金を法人経由で受け取った個人の給与には給与課税がかかり、賞与扱いになった場合も課税対象です。

まとめ

所得補償保険は、個人で契約をし、個人で保険金を受け取ることで、その保険金は非課税となります。 法人契約の場合、役員や従業員の全てを被保険者とすることで、福利厚生費として保険料を損金計上することができます。 法人で契約した場合でも、保険金の受取人を役員や従業員とすることで、その保険金は非課税となります。

保険金を法人受け取りに設定すると、その保険料の損金算入は可能になりますが、保険金受取時に保険金は法人の益金として課税、さらに保険金を個人に支給する際に給与課税されるため、法人の場合は、保険料支払い時の税制メリットを受けるか、保険金受取時の税制メリットを受けるかの判断が必要になります。

法人契約の場合、役員の医師のみならず、従業員も全員加入とし、保険金の受け取りも役員や従業員個人とすることで、支払う保険料を損金計上することができ、受け取る保険金も非課税対象とすることができます。

※税務取扱いは、その取扱いが変わる場合があり、将来を保証するものではありません。課税関係の詳細については、税理士へご確認ください。

税制優遇の対象になることは大きなメリットです。 医療に関わるサービスは社会全体に影響や貢献を与えるものであり、医師に対する優遇措置は安定した経営の維持を目的とされています。 とくに開業医の場合は、実際のご自身の経営状況でどの程度の優遇措置が受けられるのか把握することが大切です。

所得補償保険の税務上の取扱いについて

実際の税務処理については、税理士にご確認ください。

保険加入者
(保険料負担者)
被保険者
(保険の対象者)
保険金受取人 保険料(保険加入者の税務処理) 保険料
(被保険者に
対する
課税関係)
保険金受取人が受け取った
保険金
個人開業医 本人 本人 必要経費算入不可(家事関連費であり業務について生じた費用に該当しない) 介護医療保険料控除の対象 非課税
個人開業医 従業員
(全員加入)
従業員 必要経費算入可
(福利厚生費)
非課税 非課税
個人開業医 従業員
(一部従業員
のみ)
従業員 必要経費算入可(支払給与) 給与課税の対象 非課税
個人開業医 従業員 本人
(個人開業医)
必要経費算入可(支払保険料) 非課税 収入金額
医療法人 役員 役員 役員報酬として損金算入可税法上の過大な報酬にあたる過大な部分は算入不可 役員報酬(給与)・賞与として課税対象 非課税

※役員・従業員に見舞金として支払うと法人は損金算入可。社会通念上妥当な額を超える部分は賞与扱いとなり損金算入となるが、役員賞与については損金算入不可。

また、見舞金を受け取った役員・従業員個人は、社会通念上妥当な額を超える部分については賞与となり給与課税の対象。

役員・従業員に給与などとして支払うと法人は損金参入可。また、給与として受け取った役員・従業員個人は給与課税の対象。

デメリット1:特定のリスクに限定される場合

医師向け所得補償保険には、保険会社ないし、各団体制度によって複数のプランが用意されています。その保険プランによっては特定のリスクに対する補償に限定される場合は、デメリットといえるでしょう。

たとえば、病気や怪我で就業不能になった期間中の収入補償や、診療ができない場合に代わりの診療医の雇い入れの補償、従業員の休業補償などさまざまです。あらゆるリスクに備えて保険に加入したい場合は、複数のオプションを付ける必要があるため、加入時に十分に検討する必要があります。

デメリット2:保険金の支給条件と限度額

医師向け所得補償保険では、保険金の支給に条件や限度額が設けられています。支給条件として病気や怪我、不慮の事故などは補償範囲内ですが、精神疾患※や妊娠・出産、自傷行為、危険運転による怪我などは補償が受けられません。※長期所得補償保険の場合は、特約で補償対象としている場合があります。

また、収入の範囲内で保険金額が設定される、収入の不足分を補うための保険です。実際の収入以上の金額は保険金として設定できないといった制約があります。

開業医の医師が、個人事業から法人化することで、設定可能な保険金額が縮小することがあります。個人立の開業医の場合、前述の通り、補償の対象となる「所得」の定義はクリニックの営業利益と固定費をベースとするため、高額の保険金額設定が可能になりますが、法人立の場合、医師の「所得」の定義が法人から得ている給与所得となるため、法人化することによって所得補償保険の補償対象範囲が狭くなってしまう場合があります。

デメリット3:保険料負担

医師向け所得補償保険は、いざというとき、医師の所得を補償してくれる保険ですので、その加入メリットは当然ありますが、加入のためには保険会社に契約保険料を支払う必要があります。

補償額を大きくするほど保険料は大きくなってしまうので、自身にとってのリスクや、保険でカバーしたい内容を吟味して合理的な保険契約をするようにしましょう。

短期の所得補償保険は、てん補期間(就業不能時に補償される期間)が、1~2年間と短いですが、免責期間(就業不能時に保険金が支払われない期間)が、4日や7日と短期に設定されているため、保険金の給付対象となる機会が多くなります。そういった背景から、短期と言っても保険料が長期の所得補償より安く設定されているわけではありません。

長期の所得補償保険は、てん補期間(就業不能時に補償される期間)が、3年間~満70才までと長期ないし、超長期ですが、免責期間(就業不能時に保険金が支払われない期間)が、60日や372日と長期に設定されているため、保険金の給付対象となる機会は短期の所得補償よりは少なくなるため保険料が抑えられています。免責7日、てん補1年間の短期所得補償保険より、免責60日、てん補期間10年間(てん補期間を短期の10倍)にしても、長期所得補償のほうが保険料が安いケースがあります。

ご自身の状況に合わせてプランを検討しよう

田伏 秀輝

田伏 秀輝

医師向け所得補償保険は、医師の職務や家族の生活に合わせてプラン内容をカスタマイズでき、万が一医師として働けなくなったときに安定した所得補償が受けられる保険です。

医師向け所得補償保険には短期のものと長期のものがあり、長期所得補償保険は、月額最高300万円までの大型補償が可能です。また、最長で満70才まで毎月保険金が受け取れます。長く安心できるのは、長期の所得補償保険といえるでしょう。

長期的に医院の経営や家族の暮らしを守るためには、メリットが非常に大きい保険といえます。

その一方で、毎月支払う保険料の負担や支給条件、限度額の制約などが設けられていることは忘れてはいけません。

どのような補償の内容が必要であるのか、ご自身の状況に合わせて選択できるよう検討しましょう。

とはいっても、毎日お忙しい医師の皆さんは、プランを一つひとつ確認したり、検討したりする時間を確保するのも大変ですよね。医師向け所得補償保険のプロに相談することで、効率良く自分にぴったりのプランを提案してくれるでしょう。

所得補償保険の選び方

医師にとって、所得補償保険を選ぶことは、自身の専門性と未来を守るための重要なステップです。保険を選ぶ際に重要なのは、自分の実際のリスクをカバーしているかどうかを理解することです。たとえば、開業医には事業の中断リスクが、勤務医には職務不能リスクがそれぞれ異なる形で存在します。
また、保険料は長期的な負担になるため、経済的に持続可能な範囲内で自分に合ったジプランを選ぶことが重要です。免責期間は、短ければ短いほど保険金の支払いを早く受けられますが、その分保険料が高くなる傾向にあります。
逆に、てん補期間が長い保険は、より長期間の保障を提供しますが、同様に保険料も高額になりがちです。これらの要素をバランス良く考慮し、自身のニーズに最適な保険を選択することが肝心です。

所得補償保険が必要な人とは

所得補償保険は、特に収入が途絶えることによるリスクが大きい人に適しており、医師はその代表的な職業の1つ。高い所得水準を持つ医師は、仕事ができなくなった際の経済的ダメージが一般の職業よりも大きくなる傾向があります。また、勤務医と開業医ではリスクの種類が異なります。 勤務医は、病気やケガによる就業不能に対する補償が重要であり、開業医は医院の運営に必要な固定費や経営リスクをカバーする必要があります。これらのリスクを軽減するために、所得補償保険は欠かせない選択肢といえるでしょう。

所得補償保険と就業不能保険の違い

所得補償保険と就業不能保険は、いずれも収入の減少に備える保険ですが、目的や補償内容に違いがあります。所得補償保険は、就業不能期間中の収入を補償するだけでなく、開業医の場合は事業運営に必要な固定費も補償の対象となります。 一方、就業不能保険は、病気やケガによる長期的な収入減少に対する補償を重視しており、対象が個人の所得に限定されることが一般的です。 医師にとっては、医院運営リスクをカバーする所得補償保険の方が総合的な補償を提供するため、より適している場合が多いです。

医師としてのキャリアにおけるリスクマネジメント

医師として長期的なキャリアを築く上で、リスクマネジメントは非常に重要です。所得補償保険はその一部に過ぎません。緊急資金の準備は、予期せぬ出来事や収入の中断に備える基本的なステップです。また、投資などによる収入源の多様化も、一つの収入源に依存するリスクを軽減し、経済的安定性を高めます。
医療過誤訴訟など、医師の職業上のリスクに対する保護を提供する保険も存在します。これらの対策を講じることで、医師は自身のキャリアと経済的将来を守ることができます。リスクマネジメントは、計画的に取り組むことで、より安心して医師としての職務に専念できるようになります。

保険加入時のよくある質問

医師向け所得補償保険に関して、加入前に様々な疑問を解決することが重要です。
「保険金の受取り方」については、保険金が支払われる条件、支払いの方法、受け取り時の税務処理などを事前に理解しておくことが大切です。「保険料の支払い」に関しては、保険料がどのように計算されるか、支払い方法、支払い期間など、費用に関する明確な理解が必要です。「更新時の注意点」では、保険の更新条件、保険料の変更、保障内容の見直し方法などを確認しておくことが重要です。
このような疑問に対する答えを知ることで、医師は自身にとって最適な保険選択をすることができ、将来的な不安を軽減することにつながります。

医師専門の保険アドバイザーの重要性

医師専門の保険アドバイザーの役割は、単に保険商品を提供することだけではありません。彼らは医師の抱えるリスクとニーズを理解し、最適な保険プランの選定を支援します。
例えば、勤務医と開業医では、必要とされる保険カバレッジが大きく異なります。アドバイザーはこれらの違いを把握し、個々の医師に合わせたカスタマイズされたアドバイスを提供できます。また、保険の複雑な条項や条件を明確に説明し、医師が自身の判断で最良の選択をするためのサポートをします。専門のアドバイザーと連携することで、医師は自身のキャリアと財務を守るための確かな一歩を踏み出すことができます。