ここでは、医師向け賠償責任保険の加入数について解説しています。
医師賠償責任保険は様々な保険会社から販売されており、その名称や内容など微妙に異なることからも、知らず知らずに補償が重複した保険に加入しているケースも時折見られます。なかには、加入していることを忘れて重複加入してしまっている医師もいるほど。これらの多くが保険の加入状況だけでなく、保険の中身について把握していない事が原因と思われます。
医師賠償責任保険は重複加入自体は可能です。とはいえ、意図せず加入していることは好ましくないため補償内容を吟味して加入状況を整理しましょう。
同じ種類の保険に加入する事は、保険の種類によっては良し悪しが分かれます。例えば、生命保険や学費保険などは使い分ける事でメリットが得られることが多いです。医療保険に関しても、入院保険、がん保険など重複してお支払いされます。
では、損害保険はどうなのかというと、補償対象が同じであればほとんどメリットはありません。損害保険では、保険契約時に予め定めた保険金額を上限として、実際の損害額を保険金として支払うことを基本としていますので、実際の損害額以上の補償は得られません。1つの保険で十分な補償が設定されていれば重複加入に意味はありません。しかし、1つ目の保険だけでは補償額が不十分であったり、免責金額の設定があったりする場合は、重複契約によって補償不足を補完することは考えられます。
加入数にこれといった決まった数はなく、複数の保険に加入するのであれば、不足分を補う事を意識します。
勤務医の場合では、勤務先の病院が医師賠償責任保険に加入しているなら、その保険に勤務医の補償も含まれているのかどうかで変わります。
勤務医への補償も含まれているのであれば、その内容を確認し、不足している補償を補える医師に個人的に加入するのも一つの方法です。もし、勤務医への補償がないのであれば、個人的にしっかりした補償のある医師賠償責任保険の加入を検討するのがいいでしょう。
たとえば、日本医師会に加入している場合、医師会が取り扱っている医師賠償責任保険に強制加入されていますが、その補償内容に不服がなければ他で入る必要はありません。
医師会では免責金額に設定されている100万円部分の補償を追加契約するケースはよく見受けられます。
複数の医師賠償責任保険に加入する必要性がある場合、各社が提供しているプランを総合的に評価して検討しましょう。医師向けの保険に詳しい保険のプロにみてもらうと安心です。
当然のことながら、補償金額が上がるほど年間の保険料の支払い金額は上がります。病院を対象としている賠償責任保険では、病院の規模や事故の多少・リスク管理などで設定されていますが、医師向けの賠償責任保険では医師個人の能力や診療科で設定されるのではなく、補償内容で異なります。
日本医師会の場合、医師賠償責任保険の保険料は会費に含まれており、その会費については特に研修医や30歳以下の勤務医への負担が抑えられています。逆に、30歳以上では金額が高くなっています。そのため、金額が上がる30歳まで加入し、その後はその時の状況で決める方も見受けられます。
医師賠償責任保険には大きく分けて、勤務医向けの勤務医賠償責任保険、歯科医師向けの歯科医師賠償責任保険、美容外科などの美容医療向けの美容医療賠償責任保険、独立医(病院経営者)向けの病院賠償責任保険があります。
対象となる保険への加入が可能で、専門分野ごとに考えられるリスクに対応した補償が受けられます。
また、医療現場ではさらに細かく、看護師賠償責任保険や獣医師賠償責任保険、臨床工学技士賠償責任保険、診療放射線技師賠償責任保険など、より専門分野に応じていた保険が販売されています。
複数加入する際は重複を避けてバランス良く
田伏 秀輝
医師賠償責任保険は任意保険になるため、複数加入する事も可能です。ただ、補償対象が重複する場合は、複数の保険会社からそれぞれ独立した補償が受けられるのではなく、合算での補償になります。
例えば1億円の賠償金の支払いがあったとして、上限1億の2社の契約をしていた場合、各保険会社がそれぞれ5千万ずつ保険金を支払う形になります。
医師賠償責任保険は万が一のための保険なので、それで利益を求めることはできません。損害保険の場合、実損以上の補償が得られることはありません。同じ補償内容の保険を重複加入しても年間の保険料の負担が増えるだけですので、複数に加入する場合は補償が重複しないプランを選ぶようにしましょう。