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形成外科の訴訟リスク

目次
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形成外科では、命に関わるような重大な後遺症などより、見た目に関する患者さんからのクレームの方が多くあります。

形成外科医師が訴訟リスク対策として実施すべきこと

年30件前後の訴訟が発生している

最高裁判所がまとめた医事関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数では、形成外科では年30件前後の訴訟が起こっていることがわかります(2015年~2021年時点)。令和3年度では27件あり、診療科目別既済件数割合では3.3%を占めています(※)。内科に比べると圧倒的に少ないですが、形成外科医師は内科医師などに比べると少なく、骨・関節などの骨格系や筋肉、神経系などの運動器の機能的改善のための外科なので、訴訟リスクは決して高くないとは言えません。

※参照元:最高裁判所(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/220701-iji-toukei4-shinryoukamokubetsukisai.pdf

電子カルテと医師賠償責任保険を活用

訴訟では、証拠であるカルテの開示を患者さん側から要求されます。カルテには診察室でのやり取りなどの詳細情報が詳しく記載されているので、医療行為によるミスの有無を明らかにできます。厚生労働省では、カルテの開示は患者さんの権利であるとしているので、原則として医療機関側はカルテを開示しなければいけません。近年では電子カルテが浸透していますので、追記や修正の履歴もしっかりと残り、データ改ざんの可能性も難しくなっています。日々のカルテをしっかりと記録する事で、訴訟リスクを抑えることになります。

また、もしもの時の対策として、医師個人で医師賠償責任保険に加入しておくのも、一つの有効な手立てになります。

勤務医が訴訟に巻き込まれた際に勤務先は守ってくれるか

訴訟リスクの意識が高い病院を選ぶ

医師が訴訟を起こされた際、病院側の対応はオーナーによって決まると言えます。なかにはいい加減で保身しか考えていないオーナーもいますから、そうした場合では自分で自分の身を守るために上記で紹介したような対策を取る必要があります。

逆に、訴訟リスクについて意識を高く持っている病院を選ぶようにすると、もしもの際に安心ですが、病院側が訴訟に対応したとしても、裁判に負けた場合は病院が医師に損害賠償を請求してくる可能性もあります。万が一の事を考えて、病院に丸投げしてしまうのは避けた方がいいでしょう。

また、病院が個人もカバーする保険に加入していることもあります。ただ、カバーできる範囲が不足していたり、もしもの場合に対応できないと感じられるものもあるので、個人で医師賠償責任保険に入っておくと安心です。

開業医が自身の病院での訴訟リスクに備えるには

開業医の場合は、開業の形態に合わせた医師賠償責任保険に加入する必要があります。また、連携する地域の病院に出向いて診療・治療を行ったり、開業して法人化したり、する場合、そこで起きた医療事故には自分の医師賠償責任保険が使えないケースも出てくるため、業務の実態に合わせて勤務医用の医師賠償責任保険と重ねて加入するようにすると良いでしょう。

医師賠償責任保険とは

形成外科に関する医療ミスだけでなく、標榜科目を問わず日本国内でおこなった医療行為を対象としています。損害賠償などの法律上の責任負担を補償します。

医師賠償責任保険は勤務医師賠償責任保険・病院賠償責任保険に大別されており、損害保険会社から保険が提供されております。加入方法は、個人での加入、もしくは勤務先の病院や診療科での勤務医特約対応、各種団体経由での加入等があります。例えば、日本医師会に加入している開業医の場合では、日本医師会医師賠償責任保険加入が必須ですが、近年医師会に加入しない医師も増えてきています。

医師賠償責任保険の主な補償内容

医師賠償責任保険の対象範囲は広く、被保険者である医師だけでなく、看護師や専門技師などの医療業務補助者による業務も補償対象に含まれています。さらに、標榜科目以外の医療行為による事故や、常勤先以外の医療施設で行った際に起きた事故も補償されています。

具体的な条件や詳細に関しては契約時の補償内容によって異なりますが、医師賠償責任保険では、被害者の治療費や入院費、慰謝料、休業補償などの損害賠償金の他、訴訟費用や緊急措置費用、協力費用などが支払われます。

昨今では、形成外科の手術と合わせて、美容外科分野の手術を同時に取扱う事例も少なくありません。美容を唯一の目的とする施術については、医師賠償責任保険では補償対象外となります。美容目的のみの施術におけるリスク対策を行う場合は、医師賠償責任保険とは別に、美容賠償責任専用の保険に加入する必要があります。

形成外科医師の数を考えると訴訟リスクは高い

田伏 秀輝

田伏 秀輝

内科や外科と比べると訴訟件数は少ないですが、数ある診療科の中でも形成外科は、先に挙げた資料(※)からも6番目に多い割合を占めていることがわかっています。一桁と少ない数字ですが、形成外科医師の数から考えると決して少ない数字ではありません。

また、形成外科医師のような外科的処置ではクレームの確率も低くはありません。訴訟リスクは少なくないことからも、日頃からカルテの管理の徹底と、医師賠償責任保険などのもしもの際に頼れる保険に加入しておくと安心です。

※参照元:最高裁判所(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/220701-iji-toukei4-shinryoukamokubetsukisai.pdf