医師として働けなくなったら長期で補償!
医師賠償責任保険の申請は、様々な決まりに従っておこなわれますが、申請次第では非常に手間がかかることも。そのためここでは、申請前に知っておきたいトラブルについて解説します。
気を付けたいのが勝手な行動です。医療ミスなどで賠償金の支払いが発生した場合、契約に基づいて保険会社は保険金を支払うわけですが、勝手に賠償金を支払うなどの行為があると、保険金の支払いが認められない事もあります。そうした事態を避けるためにも、事故対応にあたっては、常に保険会社に事前相談するようにしましょう。
保険金を受け取るには、所定の手続きをおこなう必要があります。保険会社は保険の支払いの可否を調査・審査するため、保険会社指定の書類を求めてきますので、正確に記入し提出します。
記入漏れや書類に不備が合った場合、保険会社から確認の連絡が入りますので、速やかに訂正もしくは不足部分を補います。記入漏れや事実と相違する部分があると保険金の支払いがされない場合もあるので、しっかりと確認してから提出しましょう。
医師賠償責任保険の補償内容は基本的にオーダーメイド(自由設計)なので、自分の立場に見合った補償を考える必要があります。設計可能なのは、賠償金額と、病院賠責の場合は補償範囲です。特に賠償金額は、自身の診療科目における過去の訴訟例から、必要な金額に合わせた賠償金額を設定するようにします。※補償プランの型が決まっている保険会社もあります。
もし、開業時にクリニックを建設し銀行から融資を受ける場合は、一般的に団体信用生命保険に加入が義務づけられており、死亡もしくは高度障害になった際のローンの支払いに備えます。さらに、クリニックの物件の引き渡し時には金融機関の要請で質権設定つきの火災保険の加入が必要になる場合があります。また、火災保険に加入する際には、店舗休業補償の特約を検討します。
イメージができない場合は、医師向け保険について熟知している保険代理店等のプロに相談することで、自分に合った保険を提案してもらいましょう。
例えば産婦人科では、賠償額が必要と判断された場合は、1億を超えることが多いので、それをカバーできる補償内容に設定することが大事です。医師という仕事は責任が大きいため、何かあったときは賠償額も大きくなります。それをカバーできる保険を選ぶことが重要です。
自身の診療科目で予測される賠償金に見合わない額で契約してしまうと、不足分について自分で支払うことになります。
医師賠償責任保険には弁護士対応が含まれていますが、医療現場や医療訴訟に詳しくない弁護士や専門家では、訴訟が起きたときに納得のいく解決を図れない事もあります。医療ミスによる訴訟は専門性が高いので、詳しい弁護士や保険の専門家でないと、裁判では不利になってしまうことも。医療訴訟に詳しい、実績がある、もしくは専門にしている弁護士に依頼するか、保険会社から紹介された弁護士に相談すると安心です。
法的紛争が発生した際には、速やかに保険会社に連絡を入れます。どこまで保険会社に相談すればいいのかわからない場合でも、まずは保険会社に聞いておくといいでしょう。医師賠償責任保険が適用されるトラブルでは、弁護士が表立って対応するのが基本なので、医師が患者さんと勝手に賠償金額を決めたりするのはNG。保険金が下りなくなることも。
保険金の支払いが適用されるのは、保険期間中に事故対象が発見されることが基本です。具体的には、被保険者が医療ミスや事故などを認識したときもしくは認識し得たとき、患者さんから損害賠償請求が提起されたときもしくは認識したときです。このどれかに該当した時点で保険適用になります。
ですから、保険加入前のトラブルには適応されず、たとえ保険加入中でもすべて自己対応となります。さらに保険会社によっては、損害賠償請求の提起が保険期間内であること(損害賠償請求ベース)を支払い条件としていることもあるので保険会社を切り替える際には特に注意が必要です。
事前にシミュレーションし、疑問や不明点を解消
田伏 秀輝
医師賠償責任保険は多くの商品が用意されており、また勤務医や独立医など医師の立場によっても加入できる種類が異なります。保険料の安さなどで安易に補償内容を決めてしまうと、いざというときに十分な補償がもらえなかった、なんて事にもなりかねませんので慎重に設定する必要があります。万が一の事をシミュレーションし、疑問や不明点を解消してから加入するのがよいでしょう。
しかし、多忙な毎日を送る医師の皆さんは、なかなか時間の確保が難しいかもしれません。そんなときは、医師向け保険に精通しているプロに相談することで、自分に合った保険を提案してもらえるでしょう。