医師として働けなくなったら長期で補償!
ここでは、医師賠償責任保険の補償内容について解説しています。
近年では、訴訟件数が増加傾向にあり、訴訟額が億単位になることも珍しくないなど、病院や医師への訴訟リスクが高まっています。医師賠償責任保険は、医療行為の過失が原因で患者さんの症状が悪化、もしくは後遺症や死亡した場合に医師が負うことになる法的責任による損害賠償金をカバーする保険です。訴訟リスクに備えた保険として、その加入が医療業界では推奨されています。
法的責任により発生した損害賠償金を保険金でカバーするだけでなく、それ以外にかかった費用も保険金から支払われます。裁判にかかる争訟費用や弁護士費用、被害を拡大しないために措置にかかった費用、応急処置などの緊急措置費用、保険会社の求めに応じて作成した資料などの協力費用と、訴訟や師団に関わる費用を対象としています。また、弁護士費用では示談交渉の費用も含まれています。
診療中の事故を対象範囲としていますが、重過失や故意によるミスは補償対象外となります。また、美容を唯一の目的とした行為である美容外科や美容皮膚科、審美歯科なども対象外です。美容医療では一般的な医師賠償責任保険ではなく、美容医療を専門にした賠償責任保険への加入が必要となります。その他、医師賠償責任保険は基本的に日本国内での医療行為についてのみ補償の対象としているので、海外での医療行為も適用されません。
補償は主に医療行為による身体障害に対して適用されますが、医療以外の業務でも、病院(診療所)の契約する医療施設賠償責任保険の特約対応により補償対象になるケースもあります。許可のない掲載などのプライバシー侵害などの人格権侵害の例では、個人が特定されるような発表や一般来院患者を不審者と勘違いして不当拘束することなどが挙げられます。
医療訴訟では、後遺症や長期に渡る治療費、入院や介護費用、休業損害など様々な損害賠償を請求されます。患者さんが亡くなってしまうケースでは、逸失利益や死亡慰謝料、葬儀費用などがあり、若いほど賠償金額は高額です。ケースによっては億を超えることもあることから、医師賠償責任保険では最大2~3億までカバーできるようになっています。2億超の高額の補償額を設定する場合には保険会社の個別審査が必要な場合があります。
医師賠償責任保険では、保険金の支払い限度額だけでなく、免責金額の設定もされています。例えば、日本医師会では1事故あたり100万円と設定されており、100万円以下の賠償責任については保険加入者自身が負担します。保険によっては免責金額が設定されていないところもあるので、加入の際に必ず確認しておきたい部分です。個人加入の医師賠償責任保険では基本は免責設定がありません(免責金額0円)。また、医師会の100万円の免責部分のみを個人で追加契約することも可能です。
どの診療科においても訴訟リスクはあり、近年では訴訟へのハードルが低くなってきていることからも、訴訟件数も増加傾向にあります。そうした状況は医師にプレッシャーをかけ、訴訟の不安から安全圏内での診察になってしまうことなどが懸念されています。
医師賠償責任保険への加入は万一の際のリスクヘッジとなるため、こうした現状を打開するための手段になり得ます。予期せぬ出来事が起こっても、調査から裁判、賠償金の支払いまでサポートしてくれるので、安心して治療にあたることができます。
どの診療科においても医療ミスは、可能性として起こり得てしまうものでどんなに緻密な対策をとっていても思わぬアクシデントに見舞われることはゼロではありません。医師一人では対応できることが限られますが、医師賠償責任保険などのサポート体制があれば、万が一の際も患者さんへの責任に応えやすくなります。
漏れのない補償でリスクヘッジを
田伏 秀輝
医師賠償責任保険では損害賠償金だけでなく、該当する患者さんへの対応にかかった費用や裁判・弁護士費用までカバーしてくれます。場にあった保険を選択することで漏れのない補償を整えましょう。
勤務医の場合は、勤務医賠償責任保険に加入することで、メインで勤務している病院だけでなく、掛け持ちの医療機関での活動も補償範囲となりますし、医療従事者への指示によるミスも補償対象に含まれます。各病院が加入している賠償責任保険では対応できない部分を個人でカバーするのに最適です。
病院(診療所)の開設者の場合は、病院賠償責任保険に加入することで、勤務医や医療従事者の補償を追加するなど、様々な特約の追加も可能になります。
医療ミスのリスクはいつ何時でもあることからも、医師賠償責任保険に入っておくと安心です。