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歯科の訴訟リスク

目次
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患者さんの口の中でおこなわれる治療は、デリケートで視野が決して広くない部位だけに医師の技術力が問われます。予測できない患者さんの動きから、下手をすれば大きなケガを負わせてしまう可能性もあり、常に慎重な姿勢が必要です。思わぬ動きにヒヤリとさせられる事も少なくありません。

歯科医師が訴訟リスク対策として実施すべきこと

自由診療におけるトラブルから訴訟に発展

最高裁判所がまとめた医事関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数をみると、歯科では年80~100件前後の訴訟が起こっていることがわかります(2015年~2021年時点)。令和3年度では100件あり、診療科目別既済件数割合では12.2%と、多数ある診療科目の中でも高い割合になっています。これは、内科・外科に次ぐ多さであり、数ある科目の中でも高い訴訟リスクといえます。

※参照元:最高裁判所(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/220701-iji-toukei4-shinryoukamokubetsukisai.pdf

機能や見た目を良くするための歯科インプラントや矯正治療などの自由診療による高額治療が当たり前になってきているからこそ、治療結果に満足できない患者さんとの間でトラブルが起こりやすくなっていることが要因といえます。

口の中というデリケートで日常生活に大きな支障をきたす部位だけに、訴訟にまで発展するケースが増えています。

説明と決断に十分な時間をとる

訴訟の事例では、治療行為による注意義務違反だけでなく、説明義務違反も多くみられます。歯科治療では、治療方法や使用する材料・材質が多岐にわたることから、患者自身の希望による決定が重視されます。命に関わる緊急を要する事態は少ないですから、同意における時間的猶予は十分にあるとして、歯科医にはしっかりと説明する事が求められています。

さらに、歯科治療では抜歯や歯の切削などで復元不可な治療が多く、第一印象を左右するなど見た目にも大きく影響を与えることからも、十分な説明は必要不可欠とされています。治療説明については、カルテに細かく記録することが訴訟を予防する手立てになります。

また、訴訟になってしまった場合を考えて、歯科医師個人で歯科医師賠償責任保険に加入しておくのも、一つの方法です。

歯科医師が訴訟に巻き込まれた際に
勤務先は守ってくれるか

雇用先の保険だけでは不十分な事もある

歯科医師の過失が認められて賠償責任が生じた場合、使用者責任から医師だけでなく雇用主となる歯科医院にも賠償責任は発生します。

勤務している歯科医院が、勤務歯科医師を補償対象に含む歯科診療所賠償責任保険に加入している場合は、保険による対応が可能になります。ただ、契約内容によって補償内容は様々で、カバーできる範囲が不足していたりと、もしもの場合に対応できないと感じられるものもあります。そうした場合では、個人で歯科医師賠償責任保険に入っておくと安心です。

歯科医師賠償責任保険とは

歯科医師賠償責任保険では、被保険者である歯科医師だけでなく、その指示に従っている歯科衛生士や専門技師などによる医療行為も含めた、患者さんに対しての法律上の損害賠償金を保険金として支払う設計です。歯科医師が、事故発生の可能性を最初に認識した時(または認識し得た時)、もしくは患者さんからの訴訟で損害賠償請求が発生した際に適用されます。

歯科医師賠償責任保険の主な補償内容

歯科医師賠償責任保険では、損害賠償金だけでなく、訴訟や示談交渉にかかる争訟費用や損害防止軽減費用、緊急措置費用、保険会社の協力要請に応じるために支出した費用などを負担します。もちろん、弁護士費用の補償も含まれているので、訴訟・示談交渉とプロにお任せする事ができます。

歯科医療の特殊性を考慮した対策が必要

田伏 秀輝

田伏 秀輝

口腔内というデリケートで患者さんの意識がある中で治療をする歯科治療は、患者さんの予期せぬ動きでヒヤリとさせられることも少なくありません。また、虫歯などの治療だけでなく、見た目を良くするための自由診療も増えてきたことから、それにまつわるトラブルも多く発生しています。

復元不可な治療や見た目への影響が大きいといった歯科医療の特殊性からも、訴訟に発展するリスクは低くありません。もしもの場合を考えて、歯科医師個人における歯科医師賠償責任保険に加入しておくと安心です。

なお、一部のインプラントやホワイトニングなど、美容を唯一の目的とする施術については、歯科医師賠償責任保険では補償対象外となります。

美容を唯一の目的とする施術におけるリスクヘッジをする場合は、美容賠償責任専用の保険に加入する必要があります。

「忙しくて加入する暇がない」という歯科医師の皆さんは、保険について何でも気軽に相談できるプロに相談することがおすすめ。自分に合った保険を提案してもらえるでしょう。